奴はカバに食われそうになってもがんばったんだ!

祝「斬首人の復讐」(マイケル・スレイド 文春文庫刊)発売!文庫本はほとんどブックオフでしか買わない私が必ず新刊が出るとすぐに買う数少ない作家マイケル・スレイド。というかおれが小説の新刊をちゃんと出てすぐに新品で本屋で買う作家って京極夏彦マイケル・スレイドしかいない気がする。京極とスレイドは最近共通性が指摘されるようになってきましたので、そこにはおれの心に訴えかける何かがあるのでしょう。
今作「斬首人の復讐」はその邦題通り(しかしこの邦題すげえセンスだよな)スレイドのデビュー作である「ヘッドハンター」の直接の続編であるらしく、前回ロバート・ディクラークがバカだったから事実上解決していないヘッドハンター事件に十数年越しにしてようやく終止符が打たれることになるのでしょうか?というか、シリーズ通して読んでいると気付くことだが、ロバート・ディクラークは凄腕という設定なのにほとんど役に立っていない。おれの中で全世界のミステリー史上最大の苦労人に認定されているジンク・チャンドラーが、毎回一人で苦労して事件を解決している。ロバート・ディクラークは家でぼーっとしてたり木を眺めてたりするだけだ。とりあえず「暗黒大陸の悪霊」において、ジンク・チャンドラーがカバに食われそうになるシーンは本格ミステリー史上に残る名場面だ。ミステリーの歴史上これ以上のピンチが存在するだろうか。「アフリカで最も危険な動物はカバ」という知識は「暗黒大陸の悪霊」で初めて知った。マイケル・スレイドを読んでいると様々な無駄知識を得ることができる。瞬間接着剤で指紋が検出できるとか。「カットスロート」に登場するクールー病という病気はスレイドの創作かと思っていたが後に実在することを知って驚いた。最近は狂牛病との関連などで多少知名度が上がったが、「カットスロート」発売当時はほとんど誰も知らなかったと思う。
そんなおもしろくてためになるマイケル・スレイドの小説をまだ読んだことのない人は、とりあえず読めやって感じ。日本ではあまり多くない、翻訳第一作「グール」発売当時からのスレイディストの一人であるおれとしては「読めや」ということしかできない。「グール」最近創元社から再版かかったよ。「ヘッドハンター」も再版かかるらしいよ。まあ読めやって感じ。
じゃあおれはこれから「斬首人の復讐」読むんで。読んだら毛虫にでもレビューあげるから。それじゃそういうことで。