おれと破壊王

これを書いているのは七月11日。橋本真也の命日となった日である。
橋本真也が亡くなられた。なんてことだ。おれなんかがのうのうと生き長らえているのに、橋本真也のようなすばらしい男がいなくなってしまうなんて。
おれは橋本真也には、いつもブタだのダメだのしょうがねえなあとかしか言ってなかったが、昔からおれを知っている人なら知っている通り、おれが橋本真也を嫌いだと言ったことは一度もない。正直彼の試合はプロレスの試合としては、おもしろくもなんともなかった。相手の攻撃をノーガードで受けて、相手にガンガン蹴りを入れて、DDTで勝つ、ひねりもひらめきも何にもない、むしろおれが一番毛嫌いするタイプの試合だった。ただ橋本がやっているとそれは彼のオリジナルとして見られたので、まあ許せた。というか橋本真也は人間として魅力があるので、その人間としての魅力でプロレスがつまらなくてもなんとなく許せる部分はあった。
おれがどうしても忘れられない橋本真也に関するエピソードを紹介しよう。今どき知っている人もそう多くないんじゃないかと思うし。橋本は昔、道場にあった獣神サンダーライガーのマスクを勝手に被って外に出て、路上を歩き回っていた。そこにカップルが通りかかったので橋本は「ウガーッ」と威嚇したらカップルは「ヒィーッごめんなさい」と謝ったそうだ。何も悪いことしてないのに。また橋本は長州力のテーマ「パワーホール」に勝手に歌詞をつけて道場で歌いながら歩き回っていたらしい。その歌詞とはこうだ。
長州力 足が短い 長州力 腕も短い 長州力 胴も短い 長州力 全部短い」
橋本真也は不器用というか世渡りが下手というか、蝶野や武藤と違ってあまり自分を売り込むというか今風に言うとプロデュースというかそういうことをするのに長けていなかったし、かといって永田とか中西とかその他のメジャー系レスラーの多くのようにサラリーマンレスラーとして団体の枠の中でなんとなく収まるということもできなかった。そんな橋本だから、最近はプロレス界にもなんとなく居場所がなくなっていた気がする。単に肩を壊して試合ができなかっただけの理由ではなく、橋本は扱いづらいというのがあったはずだ。
最近はあまり名前も見かけなくなり、どうしてるんだ橋本いいかげん肩は治したのか?とかたまに思い出すことはあったが、久々に名前を聞いたかと思えば「死んだよ」だと!最後に見たのはローリングハッスルくらいか。あんなあまりにもレベルが低くて一周してハイレベルになってるようなネタを、普通は考えついても実行しないというかまず考えつかないことを堂々と実行してのける橋本真也という男は真に偉大だった。ほんと申し訳ないが試合は毎回見てもがっかりする試合ばっかりだったが、それでもおれは橋本真也が嫌いだったことは一度もなかった。破壊王の冥福を祈って今夜はこれをやります。
3!2!1!ハッスル!ハッスル!ロォーリング!ハッスル!