長い・南米のミミズよりも長い

不定期連載・第四回(だっけ?)
将軍を人質というか、なんかよくわからないが将軍を確保したブルベイカーとそれを包囲するカート・奴隷A・将軍の部下A。カート、突然ハッと何かに気付いて、手元にあった角材をブルベイカーめがけて投げつける。
カート「よけろ!将軍!」
部下A「うわ何するんだお前!下手に刺激したら将軍の命が!」
角材がブルベイカーに命中する瞬間、ブルベイカーの姿がフッとかき消える。
将軍「ヒイーッ!こ、これは一体!?」
奴隷A「一体これはどういうことだ?」
カート「やはりな。思った通りだ・・・これは奴の48の男根技の一つ、男根影分身だ」
奴隷A「男根影分身?」
カート「そうだ。奴は、男根を急激に膨張させて収縮することにより生じる空気の歪みを利用して、残像を見せてあたかもここに奴自身がいるように見せかけていたのだ」
奴隷A「はあ?言ってることがさっぱりわからねえな。お前自分が何言ってるかわかってるか?」
カート「いや、自分でもよくわかってないんだが。とにかく奴はすでにここにはいない」
将軍「と、とにかく助かった。君には感謝する。私はこの世の地獄といわれるデスメタル帝国で、腕っぷし一つを頼りに将軍の位置まで昇りつめた歴戦の勇者だが、ホモだけは苦手なんだ。これには深い理由があって、六才の時に継父の大切にしていたトラクターに勝手に乗ってドブに落とした罰にガレージの柱に後ろ向きに縛りつけられ、その話はまあいい。それで奴はどこに行ったんだ?」
カート「計算高い奴のことだ。俺達の注意を分身に引きつけておいて、自分だけ先に逃げ出そうって魂胆だろう」
その時、海のほうからブワッハッハッという高笑いが聞こえる。一同そちらを見ると、そこには救命ボートに乗って、ロープで縛り上げたその場にいた将軍のもう一人の部下を抱えたブルベイカーの姿が(過去のを読み返せばわかるが、その場には将軍の部下はAとBで二人いた。本来ホモを殺そうとしたのは「B」であったのだが、表記の都合上途中で入れ代わった。今後は現在カート達と船上にいるのを「A」ホモに捕獲されているのを「B」と表記する)。
ブルベイカー「グワッハッハッハッ!この吾輩が観念してたかが一人の男のケツの穴と引き換えに、命を捨てるとでも思ったか!生きていればこの先何千何万という男のケツの穴と肉棒が吾輩の人生に待ち受けているのだ!」
部下B「ヒイーッ!助けてくれーッ!」
ブルベイカー「この男は船旅での弁当代わりに頂いていくぞ!では諸君!涅槃で待ちたまえ!」
奴隷A「なんて野郎だ!最悪だなあいつは!」
カート「何千はともかく何万は無理じゃねえのか?一日一人としても一年で365人、がんばって一年で400人としても一万人やるのに25年かかるぞ。あいついくつだ?30才以下には見えないよな。35才だとして一万人に到達する時は60過ぎてるということになるぜ。いくらあいつが人間離れしたホモでも60過ぎてさらに一万とかは無理じゃないか?だから何万は無理だな。言いすぎだ。すまんそんなことはどうでもいいか」
その時バリバリバリという轟音と共に、船が真ん中から真っ二つに割れてカート達は海に放り出された。
「ウワアアアアーッ!!」
海に放り出されたカートの目の前に、ブルベイカーの乗った救命ボートが。
ブルベイカー「おお!カート君!助けてほしいのか!この吾輩に!よろしい、今までのことは全て水に流そう!さあ、これにつかまりたまえ!!」
と言って下半身を露出してカートの目の前に突き出す。
ブルベイカー「さあ早く!これにつかまれ!にぎりしめろオォォォーッ!!」
カート「そんなに握ってほしけりゃ握ってやるぜ!」
ガシィッ!!
ブルベイカー「グギャアアアーッ!!」
カート「ただし、その薄汚え肉棒じゃなくて、てめえの毛むくじゃらのしわ袋のほうをな!!」
カート、渾身の力を込めて、ブルベイカーの金玉をわしづかみにする!カートの鍛え上げられた筋肉から発する超人的な握力の中、「コリッ」という金玉と金玉がこすれあう世にも恐ろしい音が。
ブルベイカー(口から泡を吹いて)「ヒィィィィーッ!!」
悲鳴と共に、苦痛のあまりブルベイカーの男根から小便が噴出される。
カート「うわっこの野郎ションベン漏らしやがった!」
顔面に小便の直撃をモロに喰らったカート、思わず金玉から手を離してしまう。
ブルベイカー「ああっ!カート君ー!」
少し離れた水面で、板っ切れにつかまっている将軍、奴隷A、部下A、カートの窮地を見て
奴隷A「ああ!奴隷仲間ー!」
将軍「勇敢な奴隷!」
部下A「奴隷ー!」
カートの姿、波に飲まれ、やがて見えなくなる・・・
場面、冒頭の無人島に戻る。
カート「そういうわけで俺は気がついたらここにいたってわけだ。隣にはあんたがいた。俺はそういうわけだが、あんたはなんでこんなとこにいるんだ?」
魔術師「あんたも苦労したんだな。あんたの苦労に比べれば、俺がなぜここにいるのかってことなんかは大した問題じゃあない。ガキの遊びみたいなもんだ」
カート「まあそう言うな。どうせすることもねえんだから、あんたも話してくれよ」
魔術師「あんまり話したくないんだがな。ほら、そこに木があるだろ?その木の実は、世にも珍しい実で、魔術の材料として珍重されるのだ。俺は調査により、この離れ小島にこの木が生えていることを知り、瞬間移動の魔法でここまでやって来た」
カート「じゃあ来た時と同じように瞬間移動の魔法で帰ればいいじゃねえか。俺も連れていってくれよ」
魔術師「話を急ぐんじゃない。その瞬間移動の魔法には、いけにえとしてニワトリ三羽が必要なのだ」
カート「じゃああれか?あんた帰る時に使う、ニワトリ三羽を持ってくるの忘れたってのか?」
魔術師「話はそう単純ではない。最後まで聞け。ニワトリはちゃんと持ってきたんだ。こんなせまい島でどこにも行きようがないから、そこらへんに放しておいた。木の実取ったらすぐ帰るつもりだったしな。それであれだ、俺は知らなかったんだが、ニワトリって飛ぶんだな」
カート「はあ?短い距離ならな。ていうか魔術師って物知りだと思ってたが、そんなことも知らねえのか?」
魔術師「俺は自分が興味のあること以外は関心を持たないタイプなんだよ。それでだな、ニワトリの一羽が、こうバタバタバタと海のほうに向かって飛んでいったわけだ。俺はニワトリが飛ぶとは思っていなかったから、大層驚いたわけだが、海に落ちて溺れられても波にさらわれたりしても困るわけだから、念力の魔法で引き戻そうと思ったわけだよ。ほんとにそう思ったわけだ。それでいざ魔法をかけようとしたその瞬間だ、本当に瞬間だぜ。海面から鮫が現れてジャンプしてニワトリ一口で食っちまった」
カート「鮫?鮫がいるのかこのへんには?」
魔術師「いるいるウヨウヨいるぜ。本土のゴキブリ沖縄のハブ、このへんの鮫ってくらいウヨウヨいる」
カート「よく俺は無事だったな」
魔術師「ションベン臭かったんじゃないか」
カート「かもな。あのバカに感謝しなきゃな。それで何だっけ?」
魔術師「ああ。それで俺はあわてて残ったニワトリの足に紐をつけて、そこの木にしばりつけた。それでこれ以上ニワトリを失うことはなくなったわけだが、どっちにしても困ったことになった。いけにえに必要なのはあくまで三羽であって、二羽では瞬間移動の魔法は使えない」
カート「それであんた腹減ってヤケになって残ったニワトリ自分で食っちまったのか?」
魔術師「事態はそう単純ではない。最後まで聞け。俺も考えたよ。二羽のニワトリを三羽にするにはどうすればいいか。つまり、その二羽がオスとメスであれば、卵を生んでひよこになる。ひよことはいえニワトリはニワトリだ。いけにえにはなる。問題は俺にはニワトリのオスとメスの区別がわからないので、そのニワトリがオスとメスであるかは、運を天に任せるしかなかった」
カート「気の長え話だな。あんたが今ここにこうしているってことは、オスとメスじゃなかったんだろ?それでいつまでたっても卵を生まないんで業を煮やしたあんたは腹減ってヤケになってニワトリ食っちまった」
魔術師「違うって。オスとメスだったんだよ。確かに卵を生んで孵るまでには長い時間がかかった。大変だったよ。魚を釣ったり雨水を溜めたり。ニワトリを死なせるわけにはいかないからニワトリのエサも確保しなきゃいけないしな。そこの砂浜を掘ってゴカイを取ってニワトリに食わせたりした。そんな努力の甲斐あってついに卵が孵ってひよこが生まれた。この島で長い時間を共に過ごしたニワトリをいけにえにするのは心が痛んだが、俺は涙を飲んで二羽のニワトリとひよこをいけにえにして瞬間移動の魔法を敢行した」
カート「じゃあなんであんた今ここにいるんだ?失敗したのか?」
魔術師「そうじゃない最後まで聞けって。俺は瞬間移動の魔法を使って、ようやく愛しの我が家へ帰ることができた。帰ってまずやろうと思ったことは、俺の命を助け、無人島での孤独を癒す心の友となってくれた二羽のニワトリとひよこを供養する記念碑を作ることだった。そこでふと思い出した。俺は戻ることと生き延びることに心を奪われていて、肝心の木の実を持って帰るのを忘れていたということを。それでは貴い犠牲となったニワトリも浮かばれないので、俺は急いでまたニワトリを三羽用意して、いけにえにして瞬間移動の魔法を使って、この島に戻ってきて木の実を採取した。そこで帰りに使ういけにえのニワトリを持ってきていないことに気付いた」
カート「それはお前、最初に俺が言ったのと同じってことじゃねえか」
魔術師「結果だけ見ればそうなんだが、そこに至るまでの過程はそう単純な話ではなかったというか、だから話すの嫌だったんだ」
続く