カートの日記

今日は理解できない出来事があった。オレと魔術師はいつもの酒場で酒を飲みながらメシを食っていた。隣のテーブルではバカ医者と安達ガバラがメシを食っていたが、その脇でホモの奴が帽子とサングラスに革の短パンをはいて「フォー」とか言って腰を振っていた。「ついに、吾輩の時代がやってきた!時代がようやく吾輩に追いついたのだ!」とか言って。プライドはねえのかと思ったが「どっちが先か知っている人は知っている!フォー!」とも言っていたので意識はしているようだった。バカ医者と安達ガバラは迷惑そうだったが奴らは気が弱いので追い払うに追い払えない様子だった。オレが追い払ってやってもよかったが、お互い大人の男なんで自分の面倒くらい自分でみるべきだ。だから放っておいた。
そこへ酒場の扉を開けてデブ(ベンガリアン)が現れた。片手にスーパーの袋、片手にバットを持っていた。デブはホモに走って近寄ると、いきなりバットでホモのだらしなく突き出たブヨブヨの腹を殴りつけた。ホモは激痛のあまり「フハッ」と言うと腹を押さえてその場にうずくまった。デブは「まだまだ!こんなもんじゃすまねえぞ!」と言うと、うずくまったホモに蹴りを入れてバットで数回殴りつけた。何かホモの奴がよほどデブを怒らせることでもしたのだろうか。いやそれはいつものことだが。不思議なのはデブがバットで殴りながらも、別に怒っているようには見えなかったことだ。本来デブの奴は面白半分に人を半殺しにするような奴だが、これはあまりにひどすぎる。脈絡がない。意味がわからない。さすがにみかねて止めに入ろうと思ったが、デブはホモをバットで殴るのをピタリとやめ、スーパーの袋の中から何かを取り出した。そして、頭をかかえてヒイヒイ泣いているホモの傍らに座り込んだ。取り出したものは、どうやらウインナーの袋のようだ。デブはウインナーの袋を開けて、中身をつかみ出した。そして言った。
「おい、お前ウインナーは大好物だろ?こいつは皮なしウインナーの始祖・ウイニーだぜ。大好物だろ?なんたって皮なしだぜ。うまいぞ!さあ食え。食うんだ!」
そしてホモの頭を押さえ込むと、口をこじあけて皮なしウインナー・ウイニーをねじ込んだ。「さあ食え!うまいか!うまいだろ!」と言いながら。ホモの表情は恐怖と苦痛にゆがんでいたが、食わなければ殺されると思ったのかウインナーを口いっぱいにほおばりながら「うみゃいでしゅ」と言った。無精ヒゲに覆われたアゴを冷や汗が伝った。デブは「そうか、うまいか。もっと食えもっと食え」と言いながらウインナーを次から次へホモの口に詰め込んでいたが、突然立ち上がるとホモの股間を踏み付けた。ホモはギャピーとか言った。今度はデブはそばにあった椅子でホモを殴り出した。周囲の一同もわけのわからなさに唖然としていた。安達ガバラなど恐怖のあまりガタガタ震えていた。あまりにもひどいので止めようと思ったら、デブは椅子で殴るのをピタリとやめ、スーパーの袋からゴソゴソと何かを取り出した。かまぼことちくわのようだった。
「おい、お前かまぼこ好きだろ?ちくわもあるぜ。食え」と言うと板についたままのかまぼこをホモの口に突っ込んだ。「物足りなければ、魚肉ソーセージもある…だがその前にこいつをお見舞いだ!」と言って、袋の中から作業用の巨大なホチキスを取り出した。さすがに見兼ねて止めることにした。
「おい、お前どうしたんだ?脂肪が脳にでも回ったのか?わけがわからないぜ。いい警官と悪い警官ごっこか?いいかげんにしないとこいつ(ホモ)気が狂っちまうぜ。これはやりすぎだ」とオレは言った。するとデブは言った。
ツンデレだ」「はあ?」「知らねえのかツンデレだよツンデレ!これはツンデレだ!このギャップが世間の奴らのハートをわしづかみなんだよ!」さっぱり意味がわからなかった。どうも変な知識をどこかで仕入れてきたらしい。
ツンデレだかチンドラだかしらねえが、こんなことを続けていたらこいつ(ホモ)は死んでしまう。よくて廃人だ。今日のところはこのへんでやめとけ」
「ああ、まあカートがそう言うならしょうがねえな。これは新たな試みだったんだが。世間のニーズに合わせるのも一つの手法かと思ったんだが」ちくわをかじりながらデブは出ていった。ホモの奴が顔面がボコボコになって血と涙と鼻水をたれ流しながら、「ありがとうカート君!危うく死ぬところだった!よくて廃人だ!君は命の恩人だ!本当は心の優しい男なのだ!あんた本当は心のあったかい人なんだー!」と叫びながらオレに抱きつこうとしてきたのでオレは「触るんじゃねえ!」と言って顔面を張り飛ばした。その光景を見ていた魔術師が「ツンデレだ」と言ったがオレには全く意味がわからなかった。どいつもこいつもまったくわけがわからない。